リスタート

ドイツ語と英語

*2012年10月12日代名詞の項を充実させました。


 ドイツ語の勉強を開始し、細かい文法の勉強をしていると、文法全体の中での位置づけが見えなくなり迷子になってしまいがちです。そこで、全体像をなんとなく把握できている英語と比較して、現在の立ち位置を把握してみようという試みです。(結果的にドイツ語初級文法をほぼ網羅した形になっています笑)
 *ドイツ語学習を始めたころに書いた記事なので、ドイツ語のむずかしさを誇張しているところがあります。ご了承ください。



■動詞
 まずは動詞。英語もそうですが、ドイツ語も動詞が一番重要で、動詞の使い方のマスターが最優先だと思っています。実際大抵のテキストは動詞から勉強しますね。ここでは、規則変化を比較するだけですが。


▲現在形
 現在形「〜する」「遊ぶ」を例に人称変化をみてみます。不定詞なら英語はto play、ドイツ語だとspielenです。
*左が英語、右がドイツ語

英語   ドイツ語  
人称代名詞 動詞 人称代名詞 動詞
I play ich spiele
you(単) play du spielst
he plays er spielt
we play wir spielen
you(複) play ihr spielt
they play sie spielen

 中学一年生の時に「三単現のs」と得意げに覚えた記憶がありますが、これをみるとなんだかむなしいです。ちなみに、ドイツ語では太字のところだけを拾って「エストテンテン」と覚えるそうです。かわいいです。
 ちなみに、英語では三単現を気にしなくて済んだ助動詞(canとかwill)ですが、ドイツ語は助動詞も人称変化します。しかも不規則変化。


▲過去形
次に過去形「〜した」「遊んだ」

人称代名詞 動詞 人称代名詞 動詞
I played ich spielte
you(単) played du spieltest
he played er spielte
we played wir spielten
you(複) played ihr spieltet
they played sie spielten

過去形に関して英語は変化しません!簡単!
(ちなみに英語の過去形を学ぶのは中1の終り〜中2です。)


*過去分詞形の動詞の規則変化も英語よりちょっぴり複雑な感じがします

時制 英語 ドイツ語
原形 play spielen
過去形 played spielte
過去分詞形 played gespielt


▲命令形
最後に命令形「遊べ」

命令する対象 英語 ドイツ語
二人称単数 Play Spiel
二人称複数 Play Spielt
二人称尊称 Play Spielen Sie

これなんて、誰に対してもSpielenでいいじゃん、なんて思ってしまうのですがね。


▲その他
その他細かい部分…
*二人称には親称du、敬称Sieの二種類あり、それぞれに単数・複数形があるため、英語でいう「you」が実質四種類ある(人称代名詞を参照)。
*動詞・現在形の人称変化にも例外がある。
*「分離動詞」という、文章の中で二つに分かれる謎の動詞がある。
*さらに、そのフェイクで非分離動詞ってのもある(形は分離動詞に似てるのに分かれない)。
*現在完了・過去完了は英語と同じ(ただし、英語でいうhaveに当たるのが二種類(habenとsein)あるため、どの動詞がどちらを使うのか覚えなければならない)
*現在進行形はない。現在完了と過去形は同じ意味。



■名詞(+形容詞)
しかし、本当にややこしいのは名詞です。
動詞はまぁ慣れればなんとかなっちゃうレベルです。しかし名詞は…。


▲名詞の性
まず、良く知られているようにドイツ語には男性名詞、中性名詞、女性名詞というのがあります。そしてこれに合わせて、違う冠詞が用意されているのです。

英語 ドイツ語
the flower die Blume(女性)
the song das Lied(中性)
the wind der Wind(男性)


▲名詞の格
しかも、この「冠詞+名詞」のセット、文の中の役割(英語でいう「S」「V」「O」など)によってこれまた変化します!

英語例文 flowerの役割 ドイツ語例文
This flower is cute. 主語=一格 Diese Blume ist suess.
The fragrance of this flower is … 「〜の」=二格 Der Duft dieser Blume ist...
I gave this flower water. 間接目的語=三格 Ich gab dieser Bluem das Wasser.
I want this flower. 直接目的語=四格 Ich moechte diese Blume.

 上は【定冠詞+女性名詞】の例です。不定冠詞の場合や、中性名詞・男性名詞の場合はまた異なる変化をします。二格では名詞までついでに変化しちゃったりして困りものです。
 もう英語みたいに会話の中で考えながら「the…」なんて言えません。だって「der…」と言った瞬間、次にくる名詞は男性名詞1格か女性名詞2・3格、複数2格しかありえないんですから。


 まとめるとこんなかんじ

  英語 ドイツ語    
定冠詞 全ての名詞 男性名詞 女性名詞 中性名詞 複数
1格(〜は) the der die das die
2格 of the des der des der
3格(〜に) the dem der dem den
4格(〜を) the den die das die
不定冠詞 全ての名詞 男性名詞 女性名詞 中性名詞
1格(〜は) a/an ein eine ein
2格 of a/an eines einer eines
3格(〜に) a/an einem einer einem
4格(〜を) a/an einen eine ein


英語ってイイね!…


■代名詞
▲人称代名詞
 代名詞にはいろいろありますが、まずは基本的な人称代名詞。

・単数

英語 ドイツ語      
あなた 彼女 あなた 彼女
I you you he she   ich du Sie er sie

・複数

英語 ドイツ語    
私たち 君たち あなたたち 彼ら・彼女ら 私たち 君たち あなたたち 彼ら・彼女ら
we you you they   wir ihr Sie sie


 ここまでは簡単。ただ単語を置き換えるだけですから。次に人以外の名詞を指す場合。英語では名詞に性がないので全部「it」ですみますが、性がある言語ではそうはいきません。名詞の性に合わせて変化します。「それ」という場合にも、女性名詞はsie(英語で言うshe)、男性名詞はer(英語で言うhe)、中性名詞はes(英語で言うit)を使わなければならないわけです。(英語でも月や船はsheと呼ぶなど一部似たような習慣がありますね)

英語 ドイツ語     
全て 男性名詞 女性名詞 中性名詞
it er sie es

 
 そして、これらの代名詞も上で見たように格変化するので以下のようになります(単数のみ)。もう気軽に「it」なんて言えないですよ。名詞の性知らないと言えないですよ。

         
  君・あなた 彼女 それ あなた 彼(男性名詞) 彼女(女性名詞) 中性名詞
1格(〜は) I you he she it   ich du Sie er sie es
2格 × × × × ×   meiner deiner Ihrer seiner ihrer seiner
3格(〜に) me you him her it mir dir Ihnen ihm ihr ihm
4格(〜を) me you him her it mich dich Sie ihn sie es

▲所有代名詞
 ドイツ語の「格変化」をベースに見てきたので、英語との対応がわかりにくくなっているかもしれません。普通英語でこの分野を勉強するときはひたすら「I my me mine」と覚えさせられます。これは「主格、所有格、目的格、所有代名詞」という順に並んでいるのですが、このうち主格と目的格はドイツ語の1格と3・4格にほぼ相当します。所有格と所有代名詞はドイツ語では所有代名詞としたうえで分けられています(「所有冠詞」と「所有代名詞」と分けている本もあります)。
 せっかくですので英文法風にまとめてみましょう。

*わかりやすくするために「所有冠詞」という語を用います。
*煩雑になるのを防ぐため、英語の目的格にあたる部分にはドイツ語4格のみを記します。
*所有冠詞と所有代名詞は後続の名詞や含意する名詞と、格によって変化しますが、ここでは1格・男性名詞の場合を記しています。

  英語 ドイツ語    
主格 所有格 目的格 所有代名詞 1格 所有冠詞 4格 所有代名詞
I my me mine ich mein mich meiner
you your you yours du dein dich deiner
he his him his er sein ihn seiner
彼女 she her her hers sie ihr sie ihrer
それ it its it × es sein es seiner
私たち we our us ours wir unser uns unsrer
君たち you your you yours ihr euer euch eurer
彼・彼女ら they their them theirs sie ihr sie ihrer
あなたたち you your you yours Sie Ihr Ihnen Ihrer

 このまとめかたはドイツ語にとっては無理があります。というのも所有冠詞や所有代名詞も、格と後続の名詞の性によってやはり変化するからです。(でも、英語の勉強に慣れ親しんでいると、この表みたいなまとめがすごくわかりやすくないですか?)


・所有冠詞

  英語    ドイツ語
    男性名詞  女性名詞 中性名詞 複数形
1格(〜は) my   mein meine mein meine
2格 of my   meines meiner meines meiner
3格(〜に) my meinem meiner meinem meinen
4格(〜を) my meinen meine mein meine

*deinやseinでも同様の変化をします。


・所有代名詞

  英語    ドイツ語
    男性名詞  女性名詞 中性名詞 複数形
1格(〜は) mine   meiner meine meines meine
2格 of mine   meines meiner meines meiner
3格(〜に) × meinem meiner meinem meinen
4格(〜を) × meinen meine meines meine

*deinerでもseinerでも同様の変化をします。


 この二つの変化、実は先に紹介した「定冠詞」と「不定冠詞」の変化と非常に似ています。しかし定冠詞・不定冠詞の変化が例外で、むしろこちらの二つの変化の仕方が他の格変化の基礎になっています。所有冠詞の方の変化を「mein型」、所有代名詞の方の変化を「dieser型」と言います。
この変化の仕方を覚えておけば、形容詞の変化、指示代名詞の変化、否定冠詞(英語で言うno)の変化、所有冠詞(英語でいうmy)の変化などいろんなところに応用できるのです。


*本当は「mein」の変化と、「dieser」(「この」)という指示代名詞の変化が、格変化の基礎となっています。だから所有代名詞の変化は「dieser型」というのですが、ここでは指示代名詞を飛ばして、所有代名詞としてセットで紹介しました。



▲形容詞+名詞
 これまでしつこくやってきた格変化と性の変化は、冠詞や代名詞だけでなく全ての形容詞にも当てはまります!


 つまり英語で「良い〜」と言う時、goodの後ろに好きな名詞をおけばよかったのですが(good weatherやgood attitude,good boys)、ドイツ語ではgutの後ろに来る名詞が、男性・中性・女性・複数かをまず把握し、さらにそれぞれ1格、2格、3格、4格に合わせて形容詞の形を変えなければならないのです。
 いまちょろっと「複数」と入れましたが、つまり、big carなのかbig carsなのかで、形容詞は全く異なる変化をするのです。さらに恐ろしいことに形容詞の格変化にはいくつも種類があります。

 ・【冠詞+形容詞+名詞】の場合  :基本的に語尾に「-en」をつけるが、一部変わります。
 ・【不定冠詞+形容詞+名詞】の場合:「mein型」を基本に、若干変化があります。
 ・【形容詞+名詞】の場合     :「dieser型」を基本に若干変化があります(下の例)

こんなことって…。


・【形容詞+名詞】の例

gut 名詞の性 gutの変化
男性名詞 1格 guter
2格 guten
3格 gutem
4格 guten
女性名詞 1格 gute
2格 guter
3格 guter
4格 gute
中性名詞 1格 gutes
2格 guten
3格 gutem
4格 gutes
複数名詞 1格 gute
2格 guter
3格 guten
4格 gute

*繰り返しますが英語ならこれらはすべて「good」です。笑
*男性・中性の2格が「-en」となっている点が「dieser」と異なる。


■名詞の複数形
 もうボロボロなので詳しくは述べませんが、基本的に「s」か「es」を語尾に付ければよかった英語と違い、ドイツ語では名詞の複数形を作るのも大変です。基本的には以下の五種類があり、単語によっては幹母音が変音します。

変化型 例(単数形→複数形)
無語尾型 Onkel→Onkel
E型 Tag→Tage
ER型 Kind→Kinder
(E)N型 Junge→Jungen
S型 Kino→Kinos


▲語順
 英語と違って、格変化のおかげで文のどこにおいても、その名詞がなんの役割を果たしているかがわかります。そのせい(おかげ?)で、文の要素の順番はかなり自由です。初心者にとってはこれはきついです。

 英語では
 ・I played tennis with my friend yesterday.
 という文はほとんどこの順番以外ありえないですが、


 ドイツ語では例えばこんなかんじ(わかりやすいように英語で表現)
 ・With my friend played I yesterday tennis.
 ・Tennis played I with my friend yesterday.
 ・Yesterday played I with my friend tennis.

 英語の倒置はたまにしか起きませんが、ドイツ語の文頭はなんでもこれるので英語でいう倒置ののような文にしょっちゅう出会います。ただし、二番目は必ず動詞というルールがあります。また、それ以降もだいたい{時、原因、様態、場所}という順番で続きます。それぞれの単語の頭文字をとって「テカモロ」と覚えるそうです。(temporal,kausal,model,lokal)


以上。

 英語でいうと動詞の現在形・過去形・命令形、名詞と形容詞という単元を終えた段階というわけですか。中学二年生が習う英語のレベルの手前で苦戦しているというわけですな。トホホ。英語ではこの後助動詞、不定詞・動名詞、比較、受動態などが続きますね。まだ知っている単語も非常に少ないので、一文をゆっくり読むのがやっと、という感じです。


今年中に「ドイツ語の新聞を読めるようになること」が目標です。がんばります。


■雑感
・ドイツ語と英語は似ている?
 ドイツ語習得者の中には、ドイツ語と英語の類似性を強調する人がいます。まぁドイツ語を勉強してもらいたい、という気持ちからそのようなことになるのだと思いますが、私としては全く似てない、と言われた方がいっそすっきりします。
 たしかに同じヨーロッパの言語ですし、古ゲルマン語という同じ起源をもつため、中国語などとくらべると英語の方が色々な点でドイツ語に似てます(そりゃそうだ)。でも所詮その程度です。単語が似てると言われますが、僕は日本語となっている英語の方が、ドイツ語と共通する英語よりもはるかに多いと思っています。タオル、ブラシ、シャワー、テーブルなどの日常用語からコンティンジェンシー、レジティマシーやパターナリズムなどの専門用語まで、日本語は多くの英語を吸収しており、その数はとても多いです。ドイツ語単語と英単語の類似性は、とてもこれには及ばない、と僕は思っております。

 とはいえ、英語を習得しているなら「(アラビア語とかよりも)ドイツ語は英語に似ていると」と言えます。実際、現在完了や過去完了などの考え方他、あらゆる考え方は英語を基礎にして理解できるため、非常に早く理解できます。私が使っているテキストでは現在完了などは作り方を学ぶだけで、概念など教えてくれません(ドイツ語の場合過去形と同じ意味なのですが)。でもそれで十分なのです。英語が基礎にあるから。そして今回のエントリーで私がしたように、英語と比較することで今自分がなにを学んでいるのかを全体像から見渡せるという利点もあります。

 というわけで、前半は否定しましたが、結局英語が基礎にある人にとって、ドイツ語は学びやすい言語だといえると思います。ただし、それはヨーロッパの言語ならあまり変わらないのであって、ドイツ語が特別似ているとは思いません。語源的にはフランス語などラテン系の言語は英語から遠いはずですが、学ぶ上であまり変わりません。むしろスペイン語、イタリア語の方が学ぶの楽です。まぁどうでもいいですね。
 私みたいに変な期待をもって学習しはじめると痛い目あう、ということが言いたかったことです笑


言語学習は感情
 これだけ複雑な変化をするドイツ語(他にもこの程度の変化をする言語はやまほどありますが)を勉強すると、英語がいかに簡素化された言語であるかがわかります。英語の勉強を始めたときは、なんとも複雑な言語だと思ったわけですが、中学校の時にフランス語やドイツ語が必修だったら、と想像すると、大英帝国によって広まった言語が英語で良かったとも思うわけです(占領言語だからこそ簡素化されたのかもしれませんが)。
 とまぁ簡素な事はいいことだ、と再確認したのですが。一方でドイツ語の二格、こいつは初学者にとってとても厄介なものなのですが、この二格が最近は使われなくなってvon 〜(英語で言うof)を使うことが多くなったと聞くと、途端にさみしい気分になってしまいます。勝手なものですね。そして、こうしてさみしい気分になると、よし二格は俺が使ってやろう、という気持ちになって勉強をがんばれるのです。結局こういうどうでもよいことがモチベーションになりますね、というお話し。


■おまけ ドイツ語を入力するには

・HTMLが有効な場所に打ち込むときには以下のように打てば表示されます。

Ä Ä
ä ä
Ö Ö
ö ö
Ü Ü
ü ü
ß ß


・ワードで打つ場合は、
 −コントロールキー+【:】(コロン)の後、それぞれの母音を打てばウムラウトになります。
 −コントロールキー+シフトキー+【6】の後に【s】でエスツェットになります。


■追記1
 これを書いた時から二カ月たちました。
 いやー。意外となんとかなるんですね。いまじゃとりあえず上に書いたことは全部覚えました。簡単な単語も覚えたので、簡単な文章なら普通に読めるようになってきました。まだまだ単語力不足と中級文法が頭に入っていないので、つまづくことはありますが。でも、きちんとやってれば身に着くと言うことがわかってなんだか嬉しいです。


■追記2
 これを書いた時から約1年たちました。
 とりあえず辞書を引きながらネットの記事などを読めるようになりました。今年(2012年)はどれだけ時間がさけるかわかりませんが、辞書なしでざっくりと読み飛ばすことができるようになりたいです。とりあえず単語力が圧倒的に足りません。


ドイツ語テキストの紹介について書きました。
 →http://d.hatena.ne.jp/Pada/20110505/1340597612