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メモ:原子力基礎知識と略年表

原子力政策、原子力発電、原発事故関連の略年表

*「←」は反原発運動
青色は主な原発・関連施設事故・事件

1939 核分裂」発見
1954 原子力研究開発予算国会提出(中曽根康弘ら/2億5千万円計上)
第五福竜丸被曝←ビキニ水爆実験
1955 原子力三法成立(原子力基本法原子力委員会設置法、総理府設置法の一部改正法)
1956 科学技術庁発足
総理府に「原子力委員会」設置(事務局:科学技術庁 〜2001)
  日本原子力研究所(現・日本原子力研究開発機構)設立
1957 核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律
国際原子力機関IAEA:International Atomic Energy Agency)発足
  日本原子力発電株式会社(日本原電)設立:原発を持つ卸電気事業者
ウラル核惨事(ソ連
ウィンズケール火災事故(イギリス)
1961 SL-1事故(アメリカ)
原子力損害の賠償に関する法律
1966 日本初の商用原発 東海原子力発電所(日本原電)竣工(〜1998)
このころから東電−GE−東芝・日立/関電−WH−三菱重工という関係ができる
1970 美浜原発運転開始(電力会社初の原発)
1971 福島第一原発運転開始(東電初の原発)
1973 第一次石油ショック
1974 電源三法交付金田中角栄
原子力船むつ放射能漏れ
1975 原子力資料情報室発足
←日本初の反原発全国集会(京都)
1976 浜岡原子力発電所(中電)運転開始
1978 ←日本初の立地反対訴訟(愛媛県四国電力伊方原発)
原子力安全委員会」(規制)が「原子力委員会」(推進)から分離
福島第一原発3号機臨界事故(2007年に初めて発表)
1979 スリーマイル島原発事故(アメリカ)
第二次石油ショック
1980 石油代替エネルギー
1986 チェルノブイリ原発事故(ウクライナ
  ←「ヒロセタカシ現象」(広瀬隆『東京に原発を!(改訂版)』1986年)
  スウェーデン、イタリア、ドイツなど世界でも脱原発の動き
1989 福島第二原子力発電所3号炉、原子炉再循環ポンプ損傷事故
1993 六ヶ所再処理工場竣工
環境基本法
1995 高速増殖炉もんじゅ」ナトリウム漏洩事故 →運転停止(〜2010年)
1997 原発誘致反対住民投票新潟県巻町)など誘致反対運動が盛り上がる
京都議定書採択
1998 スーパーフェニックス(高速増殖炉)廃止決定(仏)
1999 東海村JCO臨界事故
原子力災害対策特別措置法
2001 省庁再編
→「原子力委員会」が内閣府の審議会に
→「原子力安全・保安院」(経済産業省)新設」
2002 東京電力原発トラブル隠し事件
このころから原発ルネッサンスの動き(米ブッシュ、独メルケル、英ゴードン他)
2005 京都議定書発効(2008-2012)
2007 新潟県中越沖地震柏崎刈羽原発で火災、原子炉緊急停止
2008 原油価格高騰
2009 玄海原子力発電所3号機(九州電力)で日本初のプルサーマル発電開始
2011 東北地方太平洋沖地震およびそれによる津波福島第一原子力発電所事故
  ←スイス、ドイツ、イタリアで脱原発
  ←6.11 日本全国で脱原発デモ


原子力関連基礎知識


原子力発電関連の基礎知識

核分裂反応と原子炉(高木2011、北村他2001)

ウラン中性子を吸収すると分裂し、(核分裂生成物の)運動エネルギー、γ線中性子β線を出す。そこからでた中性子が別のウランを分裂させることで、連鎖的な核分裂反応が起きる。これを安定的に持続させる装置が原子炉。
ウランは全てカナダ、オーストラリア、カザフスタンからの輸入。
ウランは低速の中性子を吸収しやすい。中性子を低速にするため、同質量の水素、従って水を使う原子炉が多い。(水は約100度以上にならないため冷却材としても使える)
・核燃料内部では、核分裂生成物が高速運動するが、周りの原子にぶつかり運動エネルギーを熱エネルギーに変える。この熱が燃料→被覆管→水へ伝わり、蒸気→タービン→発電となる。
・水を使った原子炉のうち、軽水をつかった軽水炉と重水を使った重水炉がある。(共に水素だが中性子の数が違う(従って質量が違う)同位体軽水炉のうち、加圧式が全原子炉のシェア6割で沸騰水型が2割。これらに重水炉の重水冷却管型炉型(CANDU)を加えると、現在作動中の原子炉のほぼ全てになる。開発中のものは「安全性の確保」「燃料消費量に対する燃料生成量の高さ向上」「放射性廃棄物の最小化」などに焦点が当てられている。
・沸騰水型は、炉心の熱で水を沸騰させて蒸気にし、タービンをまわす。加圧式は、炉心の熱で水を温め、蒸気発生器で別の水に熱を伝えそちらを蒸気にし、タービンをまわす。沸騰水型は、放射能汚染した水が蒸気になり、多くの機器に影響を与える。

高速増殖炉(『ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典』2011)

・「高速中性子による核分裂の連鎖反応を利用し,核分裂エネルギーを生み出しながら,他方では消費した燃料以上に新しい核分裂性物質をつくりだす原子炉」
・燃料はウランプルトニウムの混合酸化物 MOX (Mixed Oxide)
・冷却材は液体金属ナトリウム(冷却効率が良い)が主
中性子の速度を遅くする減速材は使用せず,核分裂で発生したままの高速中性子によるプルトニウム核分裂でエネルギーを生成する。
・高速中性子により天然ウランの 99%以上を占める非核分裂性のウラン 238を核分裂性のプルトニウム 239に変えることができる。

核燃料サイクル(『ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典』2011)

ウランの原鉱石からの精錬・抽出
 →原子炉で反応
 →使用済み燃料から未反応のウランや原子炉中で生成したプルトニウムを取り出す(再処理)
 →ウランプルトニウムMOX軽水炉で燃やす(プルサーマル
 →燃えないウラン238を炉中の高速中性子をあてて燃えるプルトニウム239に変える(高速増殖炉)(=もともと原子炉では使えなかったウランが使えるようになる)


放射性物質

放射線

・種類
 放射線にはα線β線γ線中性子線がある。それぞれの透過力は以下の通り。

α線 紙一枚まで ヘリウム原子核(正) プルトニウム
β線 アルミ箔まで 電子(負) セシウムストロンチウム
γ線 厚めの鉄板まで 電磁波(中性)(x線もこの仲間) セシウム
中性子 厚いコンクリートや水まで 中性子 ウラン核分裂反応時他

放射線測定

ガイガーカウンター 中のガスに放射線がぶつかってでた電子を計測/電圧をかけることで電子を加速させ、検出しやすくしている/放射線の種類の違いは考慮されない/弱い放射線も測定可能だが、ガイガーミュラー管の大きさが十分でないと不正確
電離箱 中の空気に放射線がぶつかってでた電子を計測/電圧をかけない/放射線の種類を考慮にいれて測定/弱い放射線を測定するには大型のものが必要

 他シンチレーションカウンター、 スペクトロメーター、など




・単位

ベクレルBq(/s) 一秒間に原子核が崩壊する数(放射性粒子を発射する能力)
飲料水ではBq/リットル 一秒間に一リットル中で原子核が崩壊する数
グレイGy 物質1kgあたり1ジュールのエネルギーを放射線から与えられた時の吸収線量
シーベルトSv 生物への影響を勘案してグレイを修正したもの
電子ボルトeV 一本の放射線エネルギー


例えば
Bq:WHO発表の水道水におけるヨウ素131基準値は 10Bq/L
Sv:1mSv/y(毎年)=「一般公衆が1年間にさらされてよい人工放射線の限度」ICRP
 :3Sv/h(毎時)=30日以内に50%の人が死ぬ
 :100μSv/hのところに24時間365日いたとしたら、876000μSv/y = 876mSv/y = 0.876Sv/y
  (単位に注意 1Sv = 1000mSv = 1000μSv)


放射線の被曝限度(川瀬雅也2011より)
実効線量限度

放射線業務従事者 100mSv 5年
50mSv 1年
5mSv 3年(女子)
1mSv 妊娠時点から出産までの期間
一般人 1mSv 1年

外部被曝内部被曝

 外部被曝は、人体の外にある放射性物質からでる放射線を人体が浴びることを言う。原子炉内で事故が起きても、放射性物質が原子炉外からでない場合は、外部被曝だけを考慮していれば良い。また、外部被曝の場合透過力の強い高エネルギーX線γ線中性子線が重要で,透過力の弱いα線β線は皮膚への影響以外さほど重要ではないとされている。外部被曝については許容量の基準が、日本国内でも国際的にも定められている。


 内部被曝は人体内部に放射性物質を取り込んでしまうこと。大気の吸引、飲食物の摂取、傷口の汚染によって体内に取り込まれる。体内に取り込まれた放射性物質は、体内で放射線を出すため、α線β線を含むすべての放射線が人体に影響を与える。また、セシウムは筋肉、ストロンチウムは骨に集まりやすいというように、物質の性質によって体内の特定の組織に取り込まれて集中してしまうことがある。


 *臓器親和性については、どの物質がどの臓器と結び付きやすいかの一覧を作りたかったのですが、文献が見当たらないので見送ります(ネット上には一覧が転がっています)。
 *ちなみに自然界の放射性物質と人工の放射性物質は、それが出す放射線の及ぼす影響に違いはありません。ただ、人工の放射性物質は人間の特定の臓器に集まりやすいという性質があります。聞くところによると、人間は長い時間をかけて自然の放射性物質を体外にだすシステムを作り上げてきたけれど、人工のものはまだここ数十年の間にでてきたものなので、自然界にある構造の似た他の物質と勘違いして取り込んでしまうということのようです。


参考文献
原子力発電関連年表 日本の論点2003 http://goo.gl/q33E4(2011/05/14現在).
飯田哲也,2011,「ゲンパツを可能にし、不能にしたもの」『現代思想』vol.39(7)88-94.
・高木直行,2011,「「原子力の原理」をおさらいする」『月刊化学』vol.6
・北村行孝・三島勇,2001、『日本の原子力施設全データ』講談社
・川瀬雅也,2011「あらためて放射性物質を復習しよう─放射線化学者からの基礎知識」『月刊化学』vol.6 37-44p


参考HP
 橋本努氏が「東日本大震災原発事故 資料とリンク」として、リンクをまとめています。非常によく集められていて、便利です。最近ちょっと更新がにぶっているようですが。(http://goo.gl/jpkPX