クラウドは何があたしいの?1


 「クラウドってなんなの?」
 「ネットに写真とかアップして共有すんじゃん?あれ」
 「あ、あれのことかー。でもあれって昔からあったんじゃね。なんでいまさら騒いでるの?」
 「うーん」


 クラウドコンピューティングという言葉に厳密な定義はありません。従って、厳密になにが新しいのかということはできないのですが、クラウドをとりまく知識を身につけておくと、インターネットでこれからどのようなことが起こりうるのか(何ができるのか)についての見立てがつくと思います。
 というわけで、クラウドを知るための基本的な概念をコンピュータとインターネットの歴史にまでさかのぼって振り返ってみました。書き始めると長くなって結局クラウドまで到達しませんでしたのでクラウドについては次回にまわしますが、そもそも「インターネットとウェブってなにが違うの?」や、「Web2.0ってなに?」といった疑問には応えられていると思います。

■コンピューターとインターネットの簡単な歴史

メインフレームから個人用コンピューターへ

 コンピューターは、ミサイル弾道の計算などを行うためにアメリカで電子計算機として登場しました。 1960年代までには大企業の製品管理や官庁の業務、大学の研究などにも用いられていきますが、この時代のコンピューターは巨大なメインフレームで、個人が使うものではありませんでした。(*ちなみにこのころ中心的な役割を果たしたのが何と言ってもIBM。)
 しかし、60年代後半以降マウスやウィンドウなどのユーザーインターフェースの考案、マイクロプロセッサの大量生産の実現などによって、小型化がすすみ、1977年にはアップル社が個人向けの完成品コンピューターの大量生産に成功しました。その後も様々な個人向けコンピューターが現れますが、1990年のwindows3.0あるいは95年windows95の登場で操作・使用が素人にも用意になり、これ以後全世界で個人用コンピューターが急速に広まっていきました。

パソコン通信時代

 コンピューターとコンピューターが有線でつながっているという意味でのネットワークは、大型計算機の時代からありました。しかし、おなじ規格のもの同士でしかつなげないことが当たり前であり、それは個人用コンピューターが登場してからしばらくもそのままでした。1980年代になって、パソコン通信のネットワークが誕生し、世界各地へと広まっていきました。アメリカのCompuServeやAOLなど、日本のPC-VANNIFTY SERVEなどがその例で、パソコン通信の場合は一つのホストサーバーを通して通信を行うもので、そのサーバーへの参加者間のみで通信が可能でした。

インターネットのおこり

 そうしたローカルなネットワークと別のローカルなネットワークをつなげる試み、すなわちインターネットワーキングは、1969年アメリカの複数の大学や研究所の間で行われた学術的なパケット交換網が最初でした。1983年、ARPANETというこのパケット通信網でTCP/IP通信方式が導入され、異なるOSの間でも通信が可能になりました(現在も事実上の標準プロトコル)。
 その後NSFNETに引き継がれ、既存のコンピュータ・ネットーワークと接続していきました。90年代になると、商用ネットワークがあらわれ、それにインターネット接続を容易にするWindows95,98などの登場が重なり、全世界へと広がっていくようになりました。このような商用ネット−クはNSFNetと接続されていきます。

 日本では、1984慶應大学、東京工業大学からはじまったJUNETが、全国の大学、研究所、企業などとつながっていったのがインターネットのはじまりと言われています。

インターネットの現在

 少し前までインターネットを使用するのに電話回線を利用していたことを覚えている方も多いと思います。現在は、インターネット用の回線を持つ人が多いですが、いずれにせよインターネットの基本はいまだに有線ケーブルです。広域無線LANが最近出始めていますが、しばらくの間は有線が基本となるでしょう。インターネットというと世界を飛び回っているイメージですが、各家庭・各企業へはケーブルでつながっていますし、海外ともケーブルでつながっているのですね。
また、インターネットは「網の目に広がっている」と表現されることがありますが、比喩としてはともかく実際は違います。インターネットはパソコン通信のところで説明したような形が基本です。各家庭・各企業は、各県にあるアクセスポイントへ接続してお互い通信を行うのであって、直接私の家から隣の家につながっているわけではありません。そうした各県のアクセスポイントは、地域単位で集約されますが、大きく分けると東日本は東京、西日本は大阪のネットワーク・オペレーション・センター(NOC)にまとめられます。そこからインターネット・エクスチェンジ(IX)と呼ばれる、ネットワークを相互接続する装置へ接続されます。実はここではじめて東日本と西日本のインターネット・サービス・プロバイダが相互接続されているのです。
 

■WWWとWeb.2.0

Web

 さて、簡単にコンピューターとインターネットの歴史をおさらいしましたが、これらは「ウェブ」とは違います。私達が「ネットを見る」という時は、上で説明したコンピュータネットワークとしてのインターネットをさすのではなく、ウェブページのことを指しています。ウェブページとは、World Wide Web(WWW)上にある世界共通の言語でかかれた文書のことです。
 では、WWWは何かと言うと、そうしたウェブページを相互に結びつけるシステム全体のことです。

 非常に原始的な使い方を例にWWWとウェブページを考えてみましょう。文章と写真だけのページをHTMLを使いながら作ったとします。細かい話は飛ばしますが、これだけだとまだ一台のコンピューターの中にしかありませんので、自分だけしかみることができません。そこで、みんながアクセスできるインターネット・サーバーという場所へ、置かせてもらいます。これで、ページのURLさえ知れば世界中だれでもそのページをみることができます。
 しかし、これではまだ完全に独立したページです。直接URL、すなわちウェブ上の住所を教えない限り(また、ウェブ上のさまざまなページを検索できるシステムがない限り)、だれもそこにたどり着くことができません。他のページから自分のページ、自分のページから他のページへ移動できることができて、ウェブという仮想空間の中でのつながり・交流がうまれます。このように、他の人のページ(自分が作った別のページでも良いですが)につなげることをハイパーリンクといいます。このようにして、それぞれのページが世界中でつながることができるので、World Wide Webと呼ばれているのです。インターネットが垂直的に繋がっているのに対してウェブは確かに「網の目」状に繋がり、広がっています。

Web2.0について

 上のようなウェブの使い方は、インターネットによって世界中のウェブページを見ることができるという点で画期的ではありますが、文字情報が電子化されたに過ぎず、文字情報を伝達する新しいメディアという程度の意味しか持ちません。しかし、現在のウェブはもっと複雑な事を行っています。私達が身近に用いる、検索エンジンやブログ、動画サイトにウェブメール、ネットショッピング、オンラインゲーム、RSSSNSなど…。これらは文字情報を伝達するメディアという枠を飛び越えてしまっています。こうした多くのことができるようになった状態全体をさして「web 2.0」と呼ばれていますが、こういったことをできることがウェブの強みであり、インターネット=ウェブが全く新しいメディアとして注目されるようになった理由だと私は考えています。
 この「web 2.0」という言葉は、「前までと全然ちがうよね」という感覚を表したものなので、厳密な定義はありません。その"感覚"を表明し、論文「What Is Web 2.0」でWeb.2.0の名を広めたのはTim O'Reilly氏です。ここではそれを参考にしつつも、わたしなりにざっくりと簡単にまとめてみます。

 *個人的な感想ですが、インターネットやコンピューター、web1.0の解説はネットや書籍での説明もわかりやすいのですが、web.2.0やクラウドになると、ビジネス色が強くなり利用法・活用法ばかりが説明され、それが一体なんなのか、を理解するのが難しい気がします。

Web2.0とはプラットフォーム化したWebのことだ!

 Web 2.0は様々な要素を含みますし、いろいろな形で説明されていますが、ここでは大胆に「Webのプラットフォーム化である」としたいと思います。実際web 2.0の様々な要素はここからスタートするといえます。プラットフォームというのは、アプリケーションを作動させる環境、要するにOSのようなもののことです。WindowsMac OSのようなものです。windowsで作動するアプリケーションがそのままMac OSで作動するとは限りませんし、その逆も同じです。
 Webのプラットフォーム化というのは、Web上でアプリケーションが作動できるようになったという意味です。Webでアプリケーションが作動するので、自分のコンピューターのOSがwindowsなのかMac OSなのかを気にする必要はありませんし、そこにインストールする必要がありません。特定のWebサイトにいけばそのアプリが使用できるのです。

 ユーザー側にとってプラットフォーム化で大きく変わった点は、ウェブに「参加」しやすくなったことです。これまでは例えば自分の文章をウェブページとしてインターネットに公開しよううと思ったら、デザインを考え、HTMLを打って、サーバーと契約して…といったことを自分で行わなければなりませんでしたが、そういったことをウェブ上のアプリが行うことができるようになったので、そこに文字を打つだけ、あるいはデザインを選択肢から選ぶだけで、簡単に全世界へ発信することができるようなブログ・サービスができたのです。
 もちろん「参加」しなくても、様々なアプリのおかげでウェブページが見やすくなったり、カッコよくなったり、あるいは文字を読むだけではない便利なウェブサイトを使えるようになったりしました。

 このように自由にだれでも発信できるようになる(発信しやすくなる)と、ウェブ上のコンテンツは無限に増えていきます。ロボット型検索エンジンとしてのgoogleが成功したのはこのことを利用したからですが、このように無限に増えてゆくコンテンツをいかに活かすかというのがweb 2.0以降の基本的なビジネスのスタンスです。そこで「集合知」とか「ネットワーク効果」とかいうワードがでてくるわけですが、この辺はweb 2.0時代のビジネスやコンテンツ作りに関する情報はネットでいくらでも勉強できるので探してみてください。


以上、結局クラウドまでいきませんでしたので、次回クラウドを扱いたいと思います。