「核家族化」の基礎資料

核家族化」について考える際の基本的なデータと論点についてのメモです。
まだ確認しなおしていないので、数値の正しさは保証しません。
 →確認しました(2011.10.20)


用語確認

普通世帯 1.住居と生計をともにしている人の集まりと、2.一戸を構えている単身者の世帯
一般世帯 1.上記2つの条件に 2.間借り・下宿などの単身者 3.会社などの独身寮の単身者 を加えたもの

以下では断りがない場合は「普通世帯」のデータです。
(「一般世帯」のデータを用いると「単独世帯」の占める割合が増え、「三世代世帯」や「核家族世帯」の割合が減少します。)

統計データからみる「核家族化」?

・「夫婦と未婚の子ども」の世帯数は1960年から80年代ごろまでは増加傾向にあったが、その後減少し続けている。
「夫婦と未婚の子ども」世帯

世帯数 全世帯数に占める割合
1960年 848万世帯 43.4%
1970年 1247万世帯 46.1%
1980年 1508万世帯 44.2%
1990年 1517万世帯 38.7%
2000年 1491万世帯 32.8%
2005年 1464万世帯 30.5%


・しかし、「男親と子ども」「女親と子ども」「夫婦のみ」の世帯数は全て増加している 。結果として(これらの世帯を含む)「核家族世帯」の総数は増え続けているが、全世帯における「核家族世帯」の占める割合はあまり変化していない。

核家族世帯」
世帯数 全世帯数に占める割合(普通世帯) 全世帯数に占める割合(一般世帯)
1960年 117万世帯 60.2% 53.0%
1970年 171万世帯 63.5% 56.7%
1980年 215万世帯 63.3% 60.3%
1990年 242万世帯 61.8% 59.5%
2000年 273万世帯 60.1% 58.4%
2005年 283万世帯 59.2% 57.9%


・「単独世帯」は戦後、爆発的に増加した。

「単独世帯」
世帯数 全世帯数に占める割合
1960年 91万世帯 4.7%
1970年 291万世帯 10.8%
1980年 538万世帯 15.8%
1990年 790万世帯 20.2%
2000年 1164万世帯 25.6%
2005年 1337万世帯 27.9%


・「三世代世帯」数自体は激減しているわけではないが、上記のように「夫婦のみ」世帯と「単独世帯」の増加が激しいため、「三世代世帯」の全体に占める割合は減少している

「三世代世帯」数
世帯数 全世帯数に占める割合
1980年 425万世帯 50.1%
2005年 394万世帯 21.3%


・当然、「単独世帯」が増えたことで、平均世帯人員は減少した

平均世帯人員
1960年 4.54人
1970年 3.69人
1980年 3.33人
1990年 3.06人
2000年 2.71人
2005年 2.58人

・グラフ(クリックすると別窓で開きます)
家族類型別世帯数の推移

家族類型別世帯構成比の推移


*以上のデータは国立社会保障・人口問題研究所「人口統計資料集」より
(「家族類型別世帯数および割合:1920〜2005年」「世帯の種類別平均世帯人員:1920〜2005年」)


・ただし、児童のいる世帯の構成をみると、3世代世帯の割合が減少し、「夫婦と未婚の子ども」世帯の割合が増加している(=子どもは核家族世帯で育つことが多い)。
(*3世代世帯:「夫婦・子どもと両親との世帯」、「夫婦・子どもと片親との世帯」、「夫婦・子ども・親と」他の親族との世帯」、「夫婦・子どもと他の親族との世帯」の合計)

−「(18歳未満の)児童のいる世帯」の世帯類型割合

年次 「夫婦と未婚の子ども」世帯の割合(世帯数) 3世代世帯の割合(世帯数)
1986年 65.4%(11 359) 27.0%(4 688)
1995年 65.1%(8 840) 26.9%(3 658)
2001年 65.6%(8 701) 26.4%(3 255)
2004年 68.5%(8 851) 22.5%(2 902)
2010年 70.3%(8 669) 18.8%(2 320)

 注:1995年の数値は、兵庫県を除いたもの
 以上 厚生労働省国民生活基礎調査」より


核家族化」を考える際の注意点(メモ)

●「核家族化」という時、家族の成員数の変化に注目した構成比の変化を指すものと(家族形態)、「核家族」が理想の家族形態とする考えが現れたという価値・意識の変化を指すもの(家族意識)、あるいは両方をさすものがある。


●また、家族形態としての「核家族化」は認めないものの、家族や親族が持っていた役割が変化したことは認める説もある。その役割の変化の在り方が形態変化を主張する説と重なることなどが、この「核家族化」論を複雑にしている面がある。


●「単独世帯」は「家族」に含めるべきではないという意見もある。「全世帯」から「単独世帯」を除外すると、「夫婦と未婚の子ども」世帯は全世帯における割合が高くなっている。


●近代以前の西洋その他の多くの地域で、「拡大家族」が支配的な家族構成だったわけではないことが知られている(階級差も考慮して)。
 −Peter Laslett, 1965, The World We Have Lost(二版 1971, 改訂版1983). 英国
 −Wong, Chun-kit Joseph ,1981 ,The changing Chinese family pattern in Taiwan. 台湾


●日本でも江戸時代や戦前に「核家族」がかなりの割合で存在していたとされている。
 −速水融、2001、「歴史人口学と家族史の交差」速水融・鬼頭宏・友部謙一編『歴史人口学の
    フロンティア』など
 −小山隆、1959、「家族形態の周期的変化」喜多野清一・岡田謙編『家――その構造分析』創
    文社。(→1986『リーディングス日本の社会学3 伝統家族』東京大学出版会 再録)
 −戸田貞三、1937、『家族構成』弘文堂。(→1982『叢書 名著の復興12 家族構成』新泉社)


●直系三世代以上の家族構成をとることが可能な家族における、直系三世代以上の家族の割合でみると、戦前に高く戦後が低くなっているといえる。


●人口学的要因をコントロールすると、結果が異なってくるという指摘がある。
 (65〜74歳までの高齢層の「核家族化」?)
 −盛山和夫、1993、「『核家族化』の日本的意味」直井他編『日本社会の新潮流』東京大学
    版。
 −廣嶋清志、1984、「戦後日本における親と子の同居率の人口学的実証分析」『人口問題研
    究』Vol.169、厚生労働省PDF
 −阿籐誠、1991、「家族変動と教育」『教育社会学研究』Vol.48:21-41。(PDF


●「家族」と「世帯」を同一視していることが問題であるという指摘もある。同居していなくても、様々なメディアを介して連絡・相互扶助を行うネットワークは維持されているとされる(「修正拡大家族」)。


●離婚、婚前同棲、婚外子出生…など家族の多様化(あるいは多様性への注目)をうけ、「核家族」という分類で家族を語ることの困難を説く声もある。

*参考(にしてください)

・井上俊編、1996、『岩波講座 現代社会学19 <家族>の社会学岩波書店
・M.ミッテラウアー、1994、『歴史人類学の家族研究−ヨーロッパ比較家族史の課題と方法』新曜社(=1990年若尾他訳)。
・森岡清美・望月嵩、1997、『新しい家族社会学』培風館。
・落合恵美子、2001、『第三版 21世紀家族へ――家族の戦後体制の見かた・超えかた』有斐閣
・ピーター=ラスレット・斎藤修著、1988、『家族と人口の歴史社会学――ケンブリッジグループの成果』リブロポート。
・平井晶子、2008、『日本の家族とライフコース』ミネルヴァ書房

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追記

核家族化」神話について金明秀さんのツイートを引用(強調はすべて引用者)

古い厚生省の統計は単身世帯を核家族カテゴリーに含めていたため、高齢化や晩婚化の影響がすべて名目的に核家族率を押し上げていた。その時代に核家族の神話が形成された。(2011年8月24日21:00ごろ

単身世帯を除いた「夫婦と未婚子からなる世帯」のうち、さらに高齢世帯を除外した(イメージ通りの)核家族」の比率については、高度経済成長期にやや増加がみられたものの、基本的には江戸時代から5〜6割とさほど変わっていない。2011年8月24日21:00ごろ

ただし、産業化に伴って、(それまで近隣に居住していた)きょうだい家族の居住地が離散したことにより、結果として「核家族化」と呼ばれている現象に近い孤立化現象はたしかにある程度増加した。(2011年8月24日21:00ごろ

―――
メモ
・「ますます進む核家族化…種類別世帯数の推移をグラフ化してみる」(2010年8月20日)
 http://www.garbagenews.net/archives/1496630.html
 (ミスリーディングなタイトルと解釈だが、データは役に立つ)
・広井多鶴子「核家族化は「家庭の教育機能」を低下させたか」
 http://www.myilw.co.jp/life/publication/quartly/pdf/57_01.pdf
 「核家族論1—核家族化は進行したか」
 http://web.mac.com/hiroitz/iWeb/Site/4E4E6762-AA31-4322-9650-68C38E51E0F0_files/9%EF%BC%89%E6%A0%B8%E5%AE%B6%E6%97%8F%E8%AB%96%EF%BC%91.pdf
・木戸 功、2010、『概念としての家族―家族社会学のニッチと構築主義




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