若者の「内向き志向」について 2012年版

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・更新履歴 2013年6月8日
  :文章の微調整
  :20代人口と20代出国者数を比較したグラフを追加
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以前、若者の「内向き志向」と呼ばれる現象に対して、20代の出国者数と留学者数の二つの面で検証した記事を書きました。


「若者の内向き志向」について1 〜若者の留学離れ?〜
「若者の内向き志向」について2 〜若者の海外旅行離れ?〜


詳しくは記事を読んでいただきたいのですが、どちらも20代の人口減で説明できる部分が大きいが、海外旅行者数(=「出国者数」)については人口減以上に減少しているという結論に至りました。


前の記事が2009年のデータまででしたので、2011年のデータまでを用いてその後の状況を簡単にみてみたいと思います。
今回は、出国者数について。


*素人が数字をグラフ化しただけなので高度な分析は期待しないでください


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■結論■
1.20代の出国者数
  →1996年のピーク以降減少傾向だったが、ここ3年は増加
2.20代の対人口出国率
  →1996年をピークに増加は止まり減少に転じるが、ここ3年は増加。
3.対全世代出国率
  →全世代に対する20代の出国率は減少傾向から横ばいへ
  (他世代の出国者数増加が影響している可能性大)
4.40代の出国者数・出国率
  →この二年間はともに増加
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0.2007年、2008年の記事から

 ここは読み飛ばしていただいた構いません。もともとこのデータを調べてみようと思ったのが、2007年前後によく見られた以下の記事のような物言いに対する違和感だったので、一応載せておきます。


若者の海外旅行離れ「深刻」 「お金ないから」に「休み取れない」


法務省出入国管理統計によると、2007年の海外旅行者(出国者数)は前年比1.4%減の1730万人。03年以来、4年ぶりに減少に転じた。しかし、旅行業界でもっと深刻に受け止めているのが若者の「海外旅行離れ」。同統計によると、20〜29歳の海外旅行者数は1996年の463万人から、2006年には298万人にまで減少。10年間で35%近い「激減」で、若者の「海外離れ」が深刻になっているのである。(2008/4/30)
Jcastニュースより


若者が旅行に行かない!?

世界的な大交流時代を迎えるなか、日本の若者の旅行離れが進んでいる――。


法務省のデータを基にした出国率を2000年と2006年で比較すると、20─24歳の男性は12・4%から11・5%に、女性は27・4%から22・5%に、7年間で大きく減少している。25─29歳では、男性は20・1%から17・3%に、女性は31・5%から25・0%に減少。さらに、30─34歳では男性が23・8%から21・0%に、女性は21・3%から19・3%といずれも減少している。とくに女性の減少幅が大きい。(2007/10/09)

メディアサボールより 旅行新聞新社 旬刊旅行新聞 編集長 増田氏の記事

 それぞれの記事は、若者の海外旅行離れを主張しているという点は同じですが、前者は、若者の出国者数の全体量が減っていることをもって、後者は出国者率(若者の出国者数/若者の人口)の減少をもって、「若者」の海外旅行離れを主張しています。
 前回提示したデータをみればわかりますが、ここで「若者」と言われているのは「20代の人々」のことで、「海外旅行」というのは出入国管理統計における「出国」、「出国率」は、「20代出国者数/20代人口」のことです。
 *ちなみに出入国管理統計における「出国」は同一人物であるか否かを問うていないので、この計算によってでてくる「出国率」はかなり雑なものです。詳しくは前記事を参照下さい。

1.出国者数

最近10年間の出国者数の推移です。


まずは総数と一緒に20代の出国者数を見ておきましょう。
(総数や長い期間の中で見ることで冷静になれます)


続いて20代の出国者数のみ取り出します。

1996年を境に減少に転じ、2000年と2004年以外は毎年減少が続いていましたが、
2009年からは増加に向かっています。


20年間の推移です。

 スパンを長くとると、1996年までは一貫して上昇傾向であったことがわかります。1996年という年は20代人口のピークだった年でもあり、20代人口と20代出国者数は似たような推移を示します。

2.対人口出国率

最近20年間の対人口出国率の推移です。
(20代出国者数/20代人口 *「出国者数」は同一人物かどうかを問わない単純な数です)

 出国者数のグラフ同様1996年を境に減少へ転じますが、減少の度合いはゆるやかです。
冒頭に紹介した記事で、「(1996年から2006年の出国者数は)10年間で35%近い『激減』」と表現されていましたが、人口減少を考慮すると4,7%の減少です(2011年の数字なら3.5%)。人口減を考慮するだけでかなり印象が異なります。

 出国率でみると2000年以降は19%前後を維持しており、直近3年間の出国率が3%以上の上昇であることをみると、人口減にも関わらず減少幅は縮みつつあるとの評価も可能です。(もちろん人口減だけでは説明できない減少分があるから出国率が一時期下がったのですが)

3.対全世代出国率

前回、他世代と比較した時の若者世代の「内向き」が目立つ、という意見があることを紹介しました。


グラフを見ると、やはり1996年から減少が続き2007年に減少が止まって以来横ばいとなっています。全世代に対する出国率となると、他の世代の出国者数を考慮しなければなりません。そして前回指摘したように、20代人口が減少しつづけているのに対し、より上の世代の人口は増え続けており、それに伴って上の世代の出国者数も増加したことが影響していると考えられます。

4.40代の出国者数・出国率

 前回、直近の状況として(2008年、2009年)、20代の出国者数・出国率は上昇しているにも関わらず、40代の出国者数・出国率は減少しているということを書きました。その後のその後2年のデータをいれると以下のようになります。

これを見ると、この2年間で再び上昇していることがわかります。2004〜2007年は20代出国者数は減少し40代は上昇、2008−2009年は逆に20代出国者数は上昇し40代は減少というあべこべの動きを示していましたが、ここ2年はどちらの世代も上昇という同じ動きを見せています。


とりあえず、今回は以上です。
留学者数についてはまた次回。


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今回作ったグラフは全て以下をもとにしています。
 ・法務省出入国管理統計
   −1964〜2005年はこちらから
   −2006〜2009はこちらから
 ・統計局人口推計
  −1964〜2000年はこちらから
  −2000〜2009年はこちらから


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■おまけ
 前回、若者が海外へ行かなくなったことを、若者が「行きたがらなくなったから」という心理的な要因に求めることに対する反論として、インターネットを用いた意識調査を紹介しました。同調査会社が2010年に再び調査をしているようなので、こちらも更新。(ただし、調査対象者も調査目的も異なるため、グラフで比較することは控えました)


マクロミルという市場調査会社によるインターネット調査

・2008年「海外旅行に関する調査」
 −全国の15才〜39才の男女(マクロミルモニタ会員)
 −インターネットリサーチ
 −2008年7月23日(水)〜7月25日(金)
 −4740サンプル(性別・年代で割付 各470)
  *PDFはこちら

・2010年「海外旅行に関する調査」
 −1都3県(東京觥・神奈川県・千葉県・埼玉県)の、20才以上の会社員男女(公務員、経営者・役員含む)(マクロミルモニタ会員)
 −インターネットリサーチ
 −2010年8月25日(水)〜8月27日(金)
 −有効回答数1000(性別・年代で割付 各125)
  *PDFはこちら


2008年調査では
・海外旅行に「興味がある」「やや興味がある」の合計が、10代で74.35%(36.7%)、20代で76.8%(42.3%)。()は「興味がある」の割合。
・「2010年末までにプライベート目的で海外旅行に行きたいと思いますか」という問いに「行きたい」「やや行きたい」と答えたのは、10代で60.0%(34.2%)、20代で71.3%(44.3%)()は「行きたい」の割合。


2010年調査では
・「週末海外旅行」に「行ってみたい」「やや行ってみたい」と答えた人は、20代で83.2%(45.6%)。()は「行ってみたい」の割合。
・「海外旅行」に「興味がある」「やや興味がある」と答えた人は20代で92.0%(66.8%)。()は「興味がある」の割合。


対象も目的も異なるため比較はできませんが、20代でも海外旅行したいという意味での「出国したい」と思っている人は多くいるということはわかると思います。