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メモ:BDの歴史

 ユーロマンガに掲載されていたBDの歴史の要旨です。BDは一部好きな作家がいる程度であまり詳しくありませんでしたので参考になりました。

 全く本文とは関係ないのですが、桜の季節なので桜の歌を自分なりに訳してみました(万葉集より)


・この花の 一節のうちに 百種(ももくさ)の ことぞ隠れる おほろかにすな
 →これこれこれ 乱暴するな この枝に たくさんの言葉が 込められているのだ


・この花の 一節(ひとよ)のうちは 百種の 言(こと)持ちかねて 折らえけらずや
 →あはははは 違うわこの枝 折れたのは 言葉をたくさん 詰めすぎたからよ


…余談終わり。


■BDとは
 BDとはフランス、ベルギー中心のマンガのこと。多くはA4より少し大きいハードカバーの単行本。ページ数はたいてい48ページと少ない。そして日本と違い、雑誌掲載ではなく、単行本として描き下ろされることが多い。オールカラー作品が多いため、仕上げに時間がかかり、一巻の続きが2・3年後というのが当たり前。最近でこそ大手書店やスーパーで買えるようになったが、基本的にはBD専門店で買うもので、どこでも手に入るものではない。
 カラーで書かれていることが多いため、さまざまな色彩表現を持ち、日本のマンガにはない表現技法が進化している。しかもその絵一枚一枚が非常に美しいことがおおい。また、コマ構造や絵がっ方も違う。一ページのコマ数は日本と比べると多く、日本と違いアップを用いることは少ない。ロングショットで背景までしっかり描く。日本のマンガと比べスピーディーさがないといわれるが、そもそもそこを関心としていない。


■BDの歴史
▲初期(19世紀〜1920)
 19世紀前半、スイスの教育学者ロドルフ・トップフェールによって創始されたというのが通説。彼はコマの連続と絵の下のナレーションだけで成立する物語を作り、自ら「版画文学」と読んだ。日本の絵物語のようなかんじ。彼の影響の下、様々な作家がつぎつぎと作品を発表し、1920年代には今とかわらない作品が生み出されるようになった。

重要な作品
 ・クリストフ『フヌイヤール一家
 ・ジャン=ピエール・パンション『ペガシーヌ』
 ・ルイ・フォルトン『怠けものたち』
 ・アラン・サン=トガン『ジグとピュス』

▲ベルギー作家活躍の時代(1920〜1960)
 「スピルー」誌が創刊され、ベルギー作家が活躍する。ロブ=ヴェルによる同名の『スピルー』という作品は、様々な作家に描き継がれ、現在も刊行される人気作品。この「スピルー」誌からはモリスやフランカンなど重要な作家が輩出される。『タンタンの冒険』で成功したエルジェは自ら「タンタン」という雑誌を創刊しそこに作品を発表。そこからはエドガール・ピエール・ジャコブやジャック・マルタンなどが登場する。その後も現在に至るまでベルギーはBDの重要な拠点であり続けている

重要な作品
 ・エルジェ『タンタンの冒険』
 ・ロブ=ヴェル『スピルー』
 ・モリス『ラッキー・ルーク』
 ・フランカン『ガストン・ラガフ』
 ・エドガール・ピエール・ジャコブ『ブレイクとモーティマー』
 ・ジャック・マルタン『アリックス』


▲フランスBD界の再活性化(1960〜1980)
 60年代フランスBD界が活気を帯びはじめ、カウンターカルチャーと連動して様々な雑誌が創刊された。それに伴い表現の多様化や、子どものためじゃないBDが生まれた。その流れを率いたゴシニーが原作でユデルゾ画の『アスデリックスの冒険』は現在に至るまでフランスの国民的マンガであり続けている。彼が率いた雑誌「ピロット」からはメビウスジャン・ジロー)やジャン=クロード・メジエール、エンキ・ビラルなど重要な作家が次々登場することになる。「ピロット」以降、「月刊シャルリー」「ハラ・キリ」「レー・デ・サヴァンヌ」「フリュイド・グラシアル」など様々な雑誌が登場。中でも「メタル・ユルラン」誌と「ア・シュイーヴル」誌は前者がSFを、後者が白黒を中心とした定型にとらわれない表現を開拓した。
 しかし、80年代末には出版不況や、読者関心の低下、単行本人気から雑誌が消滅していき、BD産業自体が下火になってしまった。


重要な作品
 ・ゴシニー原作・ユデルゾ画『アステリックスの冒険』
 ・メビウス『アルザック』『アンカル』
 ・ジャン=クロード・メジエール『ヴァレリアンとロールリーヌ』『ヴァレリアン』
 ・フィリップ・ドゥリュイエ『Le Mystère des abîmes』『ローン・スローンの六つの旅』
 ・エンキ・ビラル「ニコポル三部作」『Le Bol Maudit』


オルタナティブ系BD(1990〜)
 90年代、このような状況下であらわれたのが、小出版社によるオルタナティブ系BDだった。従来のオールカラー、ページ数の決まった定型から離れ、白黒を中心に新しい表現を模索する作品群がうまれた(言うまでもなく「メタル・ユルラン」誌と「ア・シュイーヴル」誌の影響をうけている)。ラソシアシオンという出版社が中心を担い、自伝的要素の強い作品を次々とは票誌、小型の判型、ソフトカバー、白黒などを採用し、BDの刷新を図っていった。
 一方従来のBDの方でも新興出版社を中心に、少年層や青年層に支持されるヒロイック・ファンタジーやSF作品が出版されるようになる。それらはしばしばアメリカンコミックや日本のマンガの手法を取り入れており、従来のBDの枠におさまりきらないハイブリットな作品となっている。ここ数年、日本のマンガの流行がこの傾向に拍車をかけ、フランス人によるマンガ・スタイル作品が現れるようになってさえいる。


重要な作品
オルタナディブ系
 ・ジャン=クリストフ・ムニュ『ロック・グルーヴ・コミックス』
 ・ダヴィッド・ベー『大発作』『le Timbre maudit』
 ・ルイス・トロンダイム『Kaput and Zösky』『La Mouche ("The Fly") 』『Donjon』
  
・従来BD系
 ・オリヴィエ・ヴァティーヌ『アクアブルー』
 ・モルヴァン原作・ブシェ画『シヤージュ』
 ・アルレストン原作・タルクアン画『トロワのランフスト』

・その他重要な作品・作家
 ・マニュ・ラルスネ『日常の戦い』
 ・アレックス・バルビエ『市長への手紙』『バルネイとブルー・ノート』
 ・グラディミール・スムジャ『ヴァンサンとヴァンゴッホ
 ・その他(ジャック・タルディ、コピ、マルジャン・サトラピ、ブリュッチ、ユーゴ・プラッ、ボードアン、マルク=アントワーヌ・マチュー、パスカル・ラバテ、リュドヴィック・ドゥブールムなどなど… )
  

 当然ですが、僕はこれらのうちほとんど読んでいません。少ないながらも読んだ中で、しかも手に入れられる(不可能ではない)もので、BDっぽあさが味わえるものは、アレックス・バルビエ『市長への手紙』 とグラディミール・スムジャ『ヴァンサンとヴァンゴッホ』 ではないでしょうか。あと僕の大好きなニコラ・ド・クレシーの作品は最近かなり手に入れられるようになっています。メビウスなんかも手に入りやすいです。