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クラシック関連本メモ

メモ。後でちゃんと感想書くかも。


岡田暁生,2005,『西洋音楽史――「クラシック」の黄昏』中央公論. おすすめ度★★★☆☆
 本書で著者は、各時代の「西洋音楽」が「非歴史的」に並べられただけの「歴史」を避け、「徹頭徹尾『クラシックの時代』をハイライトとする西洋音楽史」を書くというスタイルをとっている。その書き方は著者の価値観に沿ったものであるため無理がなく、また多くのクラシックファンとも共通する見方であるため入門書の位置づけである本書に適していると思う。実際本書は非常に読みやすく、西洋音楽史が一つのストーリーとして読めるようになっている。
 ただ、わかりやすさのために、各時代の細かい点で誤解を生むような書き方がされており、残念。また歴史記述にありがちな現代に近づくほど羅列になってしまうという罠からも、完全には抜け切れていない。あと、これは仕方ないことだが古楽ファンからするとバロック以前の記述はけっこう不満が残る。

西洋音楽史―「クラシック」の黄昏 (中公新書)

西洋音楽史―「クラシック」の黄昏 (中公新書)


岡田暁生,2009,『音楽の聴き方――聴く型と趣味を語る言葉』中央公論. おすすめ度★★★☆☆
 「小説の読み方」や「絵画の見方」としても通じるような内容。約束事=型が、作者と聴衆で共有されているからある程度共通した「良い」「悪い」ができあがり、「おもしろい」「おもしろくない」が語られうる。具体的な記述も多少あるが、基本的には姿勢の話。前半は慎重に言葉を選んでいて、気持ちよく読めるが、後半になるにつれて著者の価値観があまり洗練されないまま前に出てきて正直あんまりおもしろくなかった。(聴き方を「聴く型」と言い換えるタイトルで、内容が想像できる人はあまり読む必要がない。そういう考え方に初めて出会う人にはおもしろいと思う)。
 「趣味を語る言葉」というタイトルにひかれたが、こっちについてはそこまで深く考察されてない。考えるヒントにはなった。

音楽の聴き方―聴く型と趣味を語る言葉 (中公新書)

音楽の聴き方―聴く型と趣味を語る言葉 (中公新書)


・皆川達夫,1977→2009,『中世・ルネサンスの音楽』講談社. おすすめ度★★★★☆
 資料の困難を自覚しつつ、世俗曲や器楽舞曲にきちんと目配りしているため、よくある単純な「クラシック音楽進歩史観」になっていなくてよい。その分雑多で、拡散している印象があるが、繰り返し読めば軸もしっかりしていることがわかる。独自の見解も組み込んでいて読み応えがある。(若干中途半端な)用語解説や、便利なミサ通常文の訳などもあって便利。

中世・ルネサンスの音楽 (講談社学術文庫)

中世・ルネサンスの音楽 (講談社学術文庫)


・皆川達夫,1972→2006,『バロック音楽講談社. おすすめ度★★★★☆

バロック音楽 (講談社学術文庫)

バロック音楽 (講談社学術文庫)


・ルシアン・ジェンキンズ,2010,『西洋音楽史Ⅰ――バロック以前の音楽』学研パブリッシング. おすすめ度★★☆☆☆
 URLとパスワードがついていて、接続すると本文で参照された音楽が聴ける。ただし、それぞれが短く量もそれほど多くないのが残念。どうせ保存できないならもっと大量に聞かせてくれてもいいのに。日本語がわかりにくく、筋がつかみにくいが、時々「おっ」という雑学が混じっている。

西洋音楽史I―バロック以前の音楽 (NAXOS BOOKS DISCOVER)

西洋音楽史I―バロック以前の音楽 (NAXOS BOOKS DISCOVER)


・田村和紀夫,2011,『交響曲入門』講談社. おすすめ度★★★★☆
 古典期の典型的な交響曲の型を元に、各時代の交響曲がどう「はずしている」のかを解説している。ソナタ形式の楽章の提示部・展開部・再現部それぞれの小節数、主題(調性)を表にしてあるのは非常にわかりやすく便利であるが、ソナタ形式の楽章すべてに一貫して提示していないのは残念。時々でてきたり、でてこなかったりする。また、ソナタ形式以外の楽章の説明が雑で、ほとんどソナタ形式楽章の比較のようになっている。各楽章の関係や、置き方など時々思い出したように述べるが、一貫してその視点でみているわけではない。
 これもやはり後期ロマン派を過ぎると、ほとんど雑多な情報の羅列でわけわかんなくなる。音楽史的な記述にこだわらずに、独断で数曲選んで代表させてきっちり分析した方がよっぽど面白かったと思う。前半は非常におもしろい。(こういう分析の仕方は後期ロマン派以降には無理があるということなのだろうか…)。

交響曲入門 (講談社選書メチエ)

交響曲入門 (講談社選書メチエ)


中川右介,2006,『3時間でわかる「クラシック音楽」入門』青春出版. おすすめ度★☆☆☆☆
 広い意味での「クラシック音楽」には、ルネサンス期の声楽から現代音楽まで様々な音楽が含まれる。当然膨大な数の曲があるわけだが、その中でも聞かれるものは非常に限られており、だからこそクラシック音楽について語ることができる。その最小公倍数を示したのが本書であるといえる。「『教養』としてクラシック音楽を聞きたいが、何をどう聞いたらいいかわからない」という人にはいいのかもしれない。
 私はこの本は全くお勧めしない。なにからなにまで押し付けがましく、クラシック音楽の懐の深さ、多様さを一切無視したように感じるからだ。しかし、この本はそこそこ売れているらしいので、考え方を変えて「こういう本を喜んで読む人はどのような人なのだろう」と考えながら読むとなかなかおもしろくなってくる。クラシック音楽の位置づけられ方、求められているもの、あるいはクラシック音楽業界の人が(著者は『クラシックジャーナル』編集長)クラシックをどう位置付けて売り出したいのか、がなんとなく見えてくる。こういう形で「クラシック音楽」産業は成り立っているのか、と。

3時間でわかる「クラシック音楽」入門 (青春新書INTELLIGENCE)

3時間でわかる「クラシック音楽」入門 (青春新書INTELLIGENCE)