拾い読み

■大野道邦、2011『可能性としての文化社会学――カルチュラル・ターンとディシプリン世界思想社

 筆者によれば、文化を研究対象とする社会学は、文化を説明されるべき従属変数と捉える「文化についての社会学sociology of cultures(弱い意味での文化社会学)」と、逆に文化を独立変数と捉える「文化社会学Cultural Sociology(強い意味での文化社会学)」の二つに区別されているという。筆者は後者の立場をとるが、かといって二つを対立的に捉えるのではなく、両者は社会現象を広く、深く分析するために「協働」できるとする。
 「非理論的」なカルチュラルスタディーズとは異なり、理論的な志向を排除しない筆者は、本書の半分以上を「理論的な方向を持った論述」に割いているが、そのことは副題に表されている。
 これらを踏まえて筆者は文化を「社会システムに制度化されパーソナリティに内面化されることをとおして社会成員に共有され、人々の行為を多かれ少なかれ制御するところの、シンボル・パターン(symbol pattern)」(ii)と定義している。


 第一章では、文化の自律性に関して、研究対象としての文化と説明変数としての文化の二つの側面から考察を加えている。前者に関しては、デュルケムによる表象・観念・シンボルの自律性の強調がパーソンズレヴィ=ストロースへ引き継がれていったこと、また文化の自律性は少し弱めながらも文化の自律性についてブルデューとギデンズも考察を行ったことを確認する。後者に関しては、再びパーソンズレヴィ=ストロースを取り上げ、説明変数として文化を理論化したとして評価する

パーソンズ:究極的な根拠(テリックシステム)→構成的シンボリズム→社会の制度化された全体的価値→社会の機能分化したサブシステムを制御する規範→行為者の目的志向
レヴィ=ストロース:シンボル的思考→連続体の分節化→「構造」→具体的な社会文化現象
ギデンズ:文化=構造と行為=実践の相互自律性と解釈図式による媒介
ブルデュー:文化的世界と社会的世界の相互自律性とハビトゥスによる媒介


*マーガレット・アーチャーによる構造化理論批判
 本文では少し触れるだけだが、知らなかったのでメモとして書いておきます。構造化理論は主体(実践=相互行為)と文化(構造=意味作用の規則)の相互前提をいったものであるが、具体的な事象説明や、文化の物象化(/構造の規定性)を批判する時に、都合のよい方にプライオリティーを与える可能性があるとして批判。
−M. Archer (1988) Culture and Agency: The Place of Culture in Social Theory, Cambridge University Press, Cambridge.
−M. Archer (2003) Structure, Agency and the Internal Conversation, Cambridge University Press, Cambridge.


■「表象」

 表象という言葉が曖昧に記憶されていたので事典で復習

・ブリタニカ
 1.外界に刺激が存在せずに引起された事物,事象に対応する心的活動ないし意識内容のことで,以前の経験を想起することにより生じる記憶表象,想像の働きにより生じる想像表象などが区別される。
 2. 現在では特に思考作用にみられるように,種々の記号,象徴を用いて経験を再現し,代表させる心的機能をさす。この場合は代表機能の語が用いられることが多い。

・森岡清見他編、1993、『新社会学辞典』有斐閣
 木田元「表象」1229pp
  ・外的対象の意識に映じた姿(心像、観念と同義に使われる)
  ・「近代初頭のかなり偏った特定の形而上学を踏まえて構築された心理学理論の枠内で形成された概念」と一蹴

 飯田剛史「集合表象」683pp
  ・神話、民話、思想・知識、偏見など一つの社会集団のなかで、客観的に確認されて、個人に内面化されている象徴、認識の働きのこと

廣松渉他編、1998『岩波 哲学・思想事典」岩波書店
 磯江景孜「表象」1339-1340pp
  ・各哲学者の用いた意味は語られるが、表象の一般的な意味は語られない(当たり前?)
  ・「私の前に据え立てられたもの」としての表象をハイデガーは批判している
  ・表象する作用と表象されたものの区別が問題になった

・村治能就編、1999『新装版 哲学用語辞典』東京堂出版
 染山直「表象」356pp
  1.意識されたすべてのもの。意識内容を構成する全てのもの。
    (観念論における認識の産出は、主観は対象を表象すると表現できる)
  2.現前していないものが現前しているかの如く想起されたもの。
    (概念ほど高度に抽象的ではなく、素朴な想起といったもの。ただし形象よりは抽象的)


■田辺俊介編、2011、『外国人へのまなざしと政治意識――社会調査で読み解く日本のナショナリズム
 ナショナリズム、移民、共生社会、シティズンシップ、ネオリベラリズム、政党支持、政権交代、ポプリズムについて、担い手が誰なのか、それぞれが相互にどのように関連しているのか、を社会調査を用いて明らかにしていくもの。

■三上剛史、2003、『道徳回帰とモダニティ−ーデュルケームからハバーマス―ルーマンへ』恒星社厚生閣